共同開発JOINT PROJECT

医療機関・薬局向け マイナンバーカードの保険証利用に対応した
オンライン資格確認端末顔認証付きカードリーダー「EXC-9000」開発秘話

Project Overview 概 要

Saffe顔認証システムは、医療機関・薬局向けマイナンバーカード対応の顔認証付きカードリーダー「EXC-9000」に搭載されました。「EXC-9000」は、厚生労働省の認可を受けて、2022年5月16日から社会保険診療報酬支払基金の医療機関向けポータルサイト経由にて販売受付が開始されています。
「EXC-9000」の開発を終え、株式会社松村エンジニアリングの松村聖津⼦さんと、R.D.Works(Saffe)顔認証事業部の⽥中仁朗による対談を実施しました。
株式会社松村エンジニアリングは、紙幣や運転免許証等の真がん技術で世界トップレベルの技術を持つ企業で、「EXC-9000」の開発において、設計・製造を行っていただきました。
2022年春の販売を終え、少し時間が経過した今、多くの壁にぶつかりながらも、周囲が期待した以上に⾼品質の性能を備えた当製品が完成するまでのエピソード、「EXC-9000」に対する思いを存分に語っていただきました。

設計仕様書への取り組み中に、⼀つ⽬の壁にぶつかった
追加、変更を余儀なくされながらも、テストを繰り返す日々

⾼いクオリティを維持するために、チーム⼀丸となって進めたプロジェクトですが、当初は、開発に⼊る前に作る膨⼤な仕様書に対し、ルール変更や追加事項が頻繁に発生しました。そのため、設計仕様書を作り上げることに多くの時間を費やしましたね。
はい、開発中にもルール変更や追加が発生したため、その都度、ペネトレーションテスト(※)を含めシステムテストを⾏いました。佳境に差し掛かる時期には、連⽇深夜まで作業が続きました。当時は⼟⽇休みや連休も取れないほど働いたことを思い出します。当時3歳だった私の⼦供が、気が付いたら⼤きくなっていたくらい(笑)それほど開発に没頭した⽇々でしたね。
(※)システムに脆弱性がないかどうかテストする手法

両社の得意分野の融合がなければ、当プロジェクトの完遂はなかった
緊張感が漂う、引き締まった現場の中でメンバーがそれぞれの役割を果たした

松村エンジニアリングさんの卓越した技術がなければ成しえなかった開発でしたが、メンバーの役割もうまく分担できたチームでしたね。特に松村さんには、製造元責任者としていつもフロントに⽴ってコミュニーケーションをとっていただきました。
期限を守らなければならないうえ、品質も保持していく必要がある。松村さんの1つ1つの丁寧な調整、判断が成功につながったと確信します。

そう思っていただけて光栄です。R.D.Works(Saffe)さんは、こちらの要望に対して決してNOとは言わない、信頼できる存在でした。どんなに高い要望にも諦めず徹底的に向き合っていただきました。R.D.Works(Saffe)の皆さんの特長はずばり、辛抱強さ、忍耐強さにあると思います。また、エンジニアを取りまとめてくださった田中さんがマネジメントしてくださったおかげで、きちんと納品がされる安心感がありました。常に伴走してくださったのは本当に心強かったです。
納期を迎えるまで、とても緊張感のある現場だったと思います。それぞれが、弱音を吐かずにやるべきことをやる。皆がゴールに辿り着こう、という思いが一致していて、お互いに不明な点はすぐに相談をしたりと、助け合いや、寄り添いができるチームでした。松村エンジニアリングさんがいなければ、完遂しなかったと思います。

最もハードルを感じた「5秒の壁」
チーム全員が、決して諦めなかったこそ、乗り越えられた

印象的なのは、「5秒の壁」ですね。カードを⼊れて情報を読み取り、⼀連の処理を終えるまで、5秒以内に終わらせなければならないという仕様の条件があったため、徹底的に取り組みました。なにか1つの大きな障害があったわけではなかったので、それぞれの担当者のそれぞれの努力の集大成であったと思います。
そうですね。壁を乗り越えられたのは、諦めなかったから(笑)。0.1秒単位の削減をひとつひとつ重ねていくだけでした。とても泥臭い作業を、ひたすら繰り返しただけですね。その 0.1秒 の積み重ねが、5秒以内という結果につながりました。

限られたコストや納期の中で、
ボトルネックになったのは、
カメラだった

カメラの性能も重要なポイントでしたね。様々な設置環境が想定される中、画像品質が低下すると正確な認証ができなくなる。それも製品の販売価格が決められていたので、内蔵されたチップを変更するなど、限界までコストダウンをしていく必要がありました。

結果的にカメラの性能は劇的に良くなり、処理速度も上がりましたね。そのおかげもあって「5秒の壁」を乗り越える要素のひとつになったと思います。実はカメラがボトルネックになっていたんだな、と思います。

業界5社の中で、最も早い処理速度を実現できた製品が完成
10インチ相当のタッチパネル画⾯はユーザも意識した、操作しやすいデザインに

こだわったのは、10インチクラスの画⾯。競合他メーカーと⽐べて最も⼤きいサイズになっています。お⼦さまや、お年寄りにも使いやすいサイズです。また、カードの読み取りと顔認証の処理が正確で、処理速度が早い。これも業界⼀の速度だと評価をいただいています。⼈間がストレスなく待っていられる限界の時間であると⾔われる5秒、また環境の違いを考慮してそれ以下の速度を実現しています。⾒た⽬の重厚感、⾼級感も特徴ですね。病院や薬局などの施設に合うデザインにもこだわりました。
カードも入れやすく、取り出しやすいのも特長ですね。日本語のほか、英語、韓国語、中国語にも対応しています。また、画面をタテにもヨコにも動かすことができます。縦にもなるので設置環境を選ばないことなど、ユーザビリティに特化しています。

両社の得意とする技術が結集して完成した、顔認証付きカードリーダー「EXC-9000」
「DX推進は、医療現場だけではありません。当社の顔認証システムが、世の中をより安⼼で安全なものにすると、伝えていきたい。」と語った⽥中。
⼀⽅、「⽇本のメーカーとして新しい技術にチャレンジしていかなければ、世界に誇れるメイドインジャパンは続いていかないと感じ、このプロジェクトに参加した」と、松村さん。
2⼈の誇らしい笑顔が印象的な対談となりました。